丸子のメモ

読書記録 / 猫 / その他記録

女は知ってしまったのだ。自撮りは真実を写さないことを。

 

ある日、女はiphoneの写真フォルダを開いた。

どのiosのバージョンアップからだったろうか、アルバムに「セルフィー」という項目が付き、内カメラで撮影した写真が自動的にまとめられるようになったのは。

 

女はふとその「セルフィー」フォルダをタップし写真を遡っていった。

 

セルフィーには、セルフィーが故に自分の顔写真が多く残っている。

女は一番古いセルフィー写真まで遡った。

それは5年前の写真であった。

(意外といまと変わってない?

すっぴん写真であるが故に今と変わらないように見えたのか、女は気分良くアルバムを閉じた。

 

ある日、友人から写真が届いた。温泉楽しかったね♪という内容と共に送られてきた写真に女は恐怖した。

 

その写真は建物を写すためにローアングルから撮られていた。

女はカメラ視線ではなかったが、笑顔だった。

その笑顔にはしっかりとサンダーバード皺が深く刻まれていた。

口角から真下に伸びる皺。

女は腹話術の人形を思い出した。

 

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女は急いでセルフィーのフォルダを開けた。

温泉写真と同じくらい笑顔で写っている昔の写真を。

 

みつけたー。

 

5年前の女の顔にもサンダーバード皺は存在した。

しかし、薄い。皺は薄いのだ。

 

女は最近のセルフィーを確認した。

そこに残酷な現実があった。笑っていない写真にサンダーバード皺がうっすらと存在するのだ。

 

女はうろたえた。

意外と5年前と変わってないんじゃないか?などと考えた自分を恥じた。

 

その時、飼い猫がテレビのリモコンの上にねっころがった。

テレビがつき、チャンネルが2・3パパッと変わったなと思った次の瞬間表示されたのはテレビショッピングだった。

 

テレビから流れてくる「こちらのファンデーションを塗ると皺が、、、ほら!わからないでしょ〜」という音声が女の脳を今までになく揺さぶった。

 

女はテレビから目を話すことができなかった。